交通事故
交通事故とは、自動車の運行によって、人の生命・身体・財産を侵害することをいいます。
交通事故は、高度経済成長に伴い、自動車が爆発的に増加したことを背景として増加の一途をたどり、「交通戦争」の標語も生まれるなど、大きな社会問題になり、その都度、様々な政策・施策が施されてきました。最近でも飲酒運転等による悲惨な事故が多発し、また、多数の幼児が死亡するなどの事故が記憶に新しいところです。このような重大な交通事故を起こした加害者の刑事責任を厳しく追及する世論の高まりなどを受け、平成13年には危険運転致死傷罪、平成19年には自動車運転等致死傷罪が刑法の一部改正により新設されるなど、交通事故は、世間の関心が高い領域といえます。
近時の交通事故の傾向として特徴的なことは、救命医療の発達等により、交通事故による死者が減少傾向にある反面、一命は取りとめたものの重篤な後遺症を残すケースが増加傾向にあることを指摘することができます。特に、外部所見が明確でなく、後遺症を客観的に把握することが困難な事案とされる高次脳機能障害、脳脊髄液減少症、反射性交感神経萎縮症(RSD)・複雑性局部疼痛症候群(CRPS)といわれる症例がその代表的なものです。
自動車は人々の移動の手段として、また、物品等の運送の手段として、日常生活にはなくてはならないものです。他方、自動車の運転に伴い、多数の人々の生命、身体、財産に被害を受けるという事態を根絶することは難しいのでしょう。
交通事故に遭った場合、または起こしてしまった場合には、法律上、
1 被害者が被った損害の賠償(民事損害賠償)
2 加害者の刑事処罰
3 違反者(多くは加害者)の行政処分
が問題となります。
2は事故により人を死傷させた人(加害者)や交通法規に違反した人(違反者)に対し、懲役や罰金などの刑罰を課すかどうかの問題であり、3は交通違反をした人の運転免許を取り消したり、停止にするなどの問題です。
刑事処罰は、警察・検察が加害者・違反者について必要な捜査を行い、起訴するかどうかを判断し、起訴された場合には、裁判所が有罪か無罪か、有罪の場合は刑の重さ(量刑)などを決めるという手続によって行われます。刑事処罰は、加害者・違反者が行った行為(人を死傷させた、交通法規に違反した)について、制裁を加えるということが直接の目的です。なお、交通法規違反のうち、比較的軽微な違反行為については、反則金を納付すれば起訴せず、警察段階で処分するという交通反則通告制度が運用されています。
行政処分は、都道府県の公安委員会が違反者について、その違反の程度に応じて、違反者の運転免許を取り消したり、一定期間、運転免許の効力を停止するなどの措置をとることにより、道路交通の安全を確保しようとすることが直接の目的です。どのような違反をすれば、どのような処分になるかということは、道路交通法令によって定められています。
以上のうち、特に法律的に専門的な能力、知識が必要となるのは、1の民事損害賠償の問題です。加害者が民事上負う法律上の責任のことを損害賠償責任といいます。被害者が交通事故によって被った損害を賠償(弁償)しなければいけない、ということですが、この問題は、加害者が法律上の責任を負うか否か、加害者が法律上の責任を負う場合、その責任の具体的な中身は何か、という大きく2つの問題にわけることができます。
加害者と書きましたが、加害者は、実際に自動車を運転していた人だけとは限りません。例えば、ある人が自分の自動車を専属の運転手に運転させていて事故を起こし、人をケガさせた場合には、専属運転手に過失があれば、専属運転手が法律上の責任(不法行為責任)を負うほか、原則として、実際には運転していなかった人も法律上の責任(運行供用者責任・使用者責任)を負うことになりますし、また、トラックの運送業者が運送中に事故を起こして人をケガさせた場合には、運送業者を雇用する会社も法律上の責任(使用者責任)を負うことになります。
自動車による人身事故の場合は、民法という一般の法律のほかに、自動車損害賠償保障法(自賠法)という法律も適用され、自賠法が適用される「運行供用者」は運転者よりもかなり広い概念です。また、運行供用者責任は無過失責任とされ(責任を免れるためには、自ら注意を怠らなかったことなどを証明することが必要)、交通事故により生命、身体を害された被害者の保護が図られています。
このように、加害者が法律上の責任を負うか否かという問題も大切ですが、以下では、実務上ご相談の多い、加害者が法律上の責任を負う場合、その責任の具体的な中身は何か、という点についてご説明しましょう。
主に問題となるのは、以下の4点です(なお、民事損害賠償も、人身損害と物的損害とに分かれますが、以下では断りのないかぎり、人身損害の問題です)。
1 損害の算定時期(損害はいつ算定できるのか)
2 損害の項目(何が損害となるのか)
3 損害の算定方法(損害はどのように算定するのか)
4 過失相殺・寄与度減額(被害者らに一定の落ち度があった場合、どうするか)
また、民事損害賠償の問題を解決するための方法を図解してご説明します。
最後に、近時、事例の多い自転車事故についても触れます。.gif)
