賃金・退職金
賃金は、通貨で、直接、毎月1回以上、全額を一定の期日に支払うべきことが労基法で義務づけられています。
賃金は給料、手当、賞与などの名称を問わず、「労働の対償」、つまり、仕事の対価として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。
賃金の額等をどのように定めるかは、労働契約で決められるべき事柄であり、いったん決めた以上、みだりに変更することはできません。
しかし、どのような場合にも、賃金の額を変更することはできないのでしょうか。これが労働条件(賃金)の不利益変更といわれる問題です。
労働契約も契約ですから、当事者、つまり、会社と従業員の合意があれば変更することは可能ですが、問題となるのは、会社が就業規則などで一方的に労働条件を変更することが許されるか、許されるとしても、許される範囲はどこまでかが問題となります。
過去の裁判例では、労働条件を不利益に変更する必要性があり、かつ合理性があると認められる場合には、使用者が労働条件を一方的に変更することが許されるという傾向にあるといえます。合理性があるかどうかの判断については、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等の交渉の経緯、他の労働組合または他の従業員の対応、同種事項に関するわが国社会における一般的状況などを総合考慮して判断されます。
先に述べた解雇との関係でいえば、裁判例は、長期雇用システムのもとでは、解雇については厳しく制約して労働者の保護を図る反面、労働条件の不利益変更については一定程度認め、使用者の実情をも反映し、それによって労使双方のバランスを取っているという見方もできると思います。
退職金は、賃金のように必ず支払わなければならないというものではありませんが、労働契約上、退職金の支払いが明確に定められている場合、そのような明確な定めがない場合でも、退職金を支払うことが労使慣行として確立している場合には、退職金は賃金と同じ性質を有し、使用者は、従業員に対し、退職金を支払う義務を負います。
退職金の減額支給・不支給としてよく問題となるのは、懲戒解雇した従業員に対し、退職金を不支給または減額支給とすることができるか否かという点です。この場合、前提として、就業規則にそのような条項がなければなりませんが、そのような条項があっても、常に退職金を減額または不支給とすることができるのではなく、退職金には過去の功労報償としての性質があることに鑑み、過去の功労報償の全部又は一部を帳消しにしてしまうほどの背信的な非行があった場合に限られるとするのが一般的です。.gif)
